声に出して脳を鍛える:音読や読み聞かせの楽しみ方
声に出す習慣で、毎日をいきいきと
年齢とともに、うっかり物忘れが増えたり、頭の回転が少しゆっくりになったと感じたりすることがあるかもしれません。多くの方が、楽しみながら自然と脳を活性化できる方法を探していらっしゃいます。
当サイトでは、認知機能の維持・向上に役立つ様々な「遊び」をご紹介していますが、今回は、皆さんが子どもの頃から慣れ親しんでいる「声に出して読む」という活動に焦点を当てます。新聞や雑誌、お好きな本、あるいは短い詩などを、ただ目で追うだけでなく、声に出して読んでみませんか。この身近な習慣が、あなたの脳に素晴らしい刺激を与えてくれる可能性があります。
この記事では、声に出して読むこと、特に音読や読み聞かせが、なぜ認知機能に良い影響を与えるのか、そして日常生活に手軽に取り入れるための具体的な方法をご紹介します。
声に出す活動が脳にもたらす良い影響
なぜ「声に出して読む」ことが脳の活性化につながるのでしょうか。目で文字を追うだけの「黙読」とは異なり、声に出す行為は、より多くの脳の領域を同時に使うからです。
まず、目から入ってきた文字情報を認識し、それを言葉として組み立てるために、言語に関わる脳の領域が活発に働きます。さらに、声として出すためには、口や舌を動かす運動野、自分の声を聞くための聴覚野も使います。リズムや抑揚をつけて読もうとすれば、感情や表現に関わる領域も関与します。
このように、声出し活動は、以下の様々な認知機能に良い影響をもたらすことが期待されます。
- 言語能力: 語彙の定着、文章理解力の向上。
- 記憶力: 声に出すことで情報が聴覚からも入り、記憶に残りやすくなる。文章を暗唱しようとすれば、さらに記憶野が活性化されます。
- 注意力・集中力: 声に出して読むには、文章に集中する必要があります。外部の刺激に注意を向けながら読み進めることで、注意力の維持・向上に繋がります。
- 遂行機能: 適切なスピードや抑揚で読むためには、事前の準備や読みながらの調整が必要です。これは目標設定、計画、実行、評価といった遂行機能の訓練にもなります。
- 思考力: 内容を理解しながら読むことで、文章の構造や意味をより深く考えるようになります。
- 感情のコントロール: 登場人物になりきったり、詩の情景を思い浮かべたりしながら読むことで、感情表現に関わる脳の領域が刺激されます。
また、声出しは呼吸器系の健康維持や、口や舌の筋肉を使うことで滑舌の維持にも役立つと言われています。
日常で楽しめる声出し遊びのアイデア
特別な道具は必要ありません。身近にあるものを活用して、今日から始められる声出し遊びをご紹介します。
1. 定番の「音読」を楽しむ
- 準備するもの: 新聞、雑誌、お好きな本、インターネットの記事など、読みたい文章が載っているもの。
- 遊び方: 一人で、選んだ文章を声に出して読みます。最初はゆっくりでも構いません。慣れてきたら、意味を意識して、登場人物になったつもりで、感情を込めて読んでみましょう。毎日決まった時間に、決まったページを読む習慣をつけるのも良い方法です。
- 期待できる認知機能への効果: 言語能力、注意力、記憶力、思考力、遂行機能。内容を理解し、表現を工夫することで、より広範な脳領域が活性化されます。
- 一人でできるか/複数人で楽しめるか: 一人で手軽にできます。
2. 誰かに聞かせる「読み聞かせ」
- 準備するもの: 絵本、物語、詩など、聞く人が楽しめる文章。聞き手(家族、友人、地域の集まりなど)。
- 遊び方: 子どもや孫に絵本を読んであげたり、友人や地域のボランティア活動で高齢者施設などを訪れ、物語や詩を読んで聞かせたりします。聞き手の反応を見ながら、声のトーンや速さを調整するのも楽しいでしょう。
- 期待できる認知機能への効果: 音読の効果に加え、聞き手の反応を察したり、コミュニケーションをとったりすることで、社会性や感情を司る領域も活性化されます。内容の理解力も深まります。
- 一人でできるか/複数人で楽しめるか: 複数人で楽しむ活動です。
3. リスニング力も鍛える「シャドーイング」
- 準備するもの: ラジオ、テレビのニュース、オーディオブックなど、話し声が流れるもの。
- 遊び方: 流れてくる音声を聞きながら、少し遅れて同じように声に出して真似て読みます。まるで「影(シャドー)」のようについていくことから、シャドーイングと呼ばれます。外国語の学習法としても知られていますが、日本語で行うことで、集中力や情報を即座に処理する能力が鍛えられます。
- 期待できる認知機能への効果: 注意力、集中力、聴覚情報処理能力、言語能力。
- 一人でできるか/複数人で楽しめるか: 一人で集中して行う活動です。
4. 記憶力を刺激する「朗読・暗唱」
- 準備するもの: 覚えたい詩や文章。
- 遊び方: お気に入りの詩や俳句、短い物語の一節などを繰り返し声に出して読み、最終的には何も見ずに暗唱できるように目指します。最初は短いものから始め、徐々に長いものに挑戦してみましょう。
- 期待できる認知機能への効果: 記憶力、集中力、言語能力、遂行機能(覚える計画を立て、実行し、確認する)。
- 一人でできるか/複数人で楽しめるか: 一人で取り組む活動ですが、覚えたものを誰かに披露する楽しみもあります。
声出し遊びを生活に取り入れるヒント
- 無理なく続ける: 毎日少しずつ(例えば5分や10分)から始めましょう。楽しむことが一番大切です。
- 好きなものを選ぶ: 興味のある内容や、読んでいて心地よい文章を選びましょう。
- 時間を決める: 「朝食後に新聞の社説を読む」「寝る前に好きな物語の一節を読む」など、習慣にしやすい時間を決めると続けやすくなります。
- 音声を録音してみる: 自分の声を録音して聞き返すと、新たな発見があったり、上達を感じられたりします。
- 記録をつける: 読んだものや時間を簡単に記録しておくと、達成感が得られ、モチベーション維持に繋がります。
声に出す習慣で、脳も心も豊かに
声に出して読むというシンプルな行為は、私たちの脳に多角的な刺激を与え、認知機能の維持・向上に繋がる可能性を秘めています。また、声を出すことは気分転換にもなり、ストレスの軽減や表現力の向上といった効果も期待できます。
特別な場所や道具は必要ありません。自宅で、手軽に始められる声出し遊びを、ぜひ今日の生活に取り入れてみてください。あなた自身のペースで、楽しみながら続けることが、脳をいきいきと保つための大切な一歩となるでしょう。