楽しみながら記憶力・思考力アップ:読書と書くことのすすめ
年齢を重ねるとともに、「あれ、何だっけ」と物忘れが増えたり、以前より物事を考えるのに時間がかかるようになったと感じたりすることがあるかもしれません。こうした変化に漠然とした不安を感じ、脳の働きを維持するために何かしたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
特別な訓練や難しいドリルに挑戦するのも良いですが、普段の生活に取り入れやすい、楽しみながらできる活動もたくさんあります。今回は、古くから身近にある「読書」と「書くこと」が、どのように私たちの認知機能に良い影響を与えるのか、そしてどのように日々の生活に取り入れて楽しめるのかをご紹介します。
読書が脳を元気にする理由
本を読むという行為は、一見静かな時間のように思えますが、実は脳にとっては非常にアクティブな活動です。物語の世界に入り込んだり、新しい知識を吸収したりする中で、脳の様々な領域が同時に働いています。
読書で刺激される認知機能
- 言語理解力と語彙力: 文章を読むことで、新しい言葉や表現に触れ、語彙が増えます。複雑な文章を理解しようとすることで、言語処理能力が鍛えられます。
- 記憶力: 物語の登場人物や出来事、あるいは解説書の内容などを記憶しようとします。短期記憶と長期記憶の両方が使われます。特に、物語の展開を追うことは、情報の последова性(順序)を記憶する訓練になります。
- 想像力: 文章から情景や登場人物の心情を思い描きます。これは脳の視覚野や感情に関わる領域を活性化させます。
- 集中力と注意力: 物語や文章に集中することで、気が散るのを抑え、注意力を持続させる力が養われます。
- 思考力と判断力: 推理小説であれば犯人を予想したり、解説書であれば内容について自分なりの考えを巡らせたりします。これは論理的思考力や批判的思考力を刺激します。
読書を認知機能アップに繋げるヒント
どのようなジャンルの本でも効果は期待できますが、普段あまり読まないジャンルに挑戦したり、少し難しめの本にチャレンジしたりすることで、脳に新しい刺激を与えることができます。新聞や雑誌、ウェブサイトの記事など、様々な文章に触れることも有効です。
- 興味のあるものから: 難しいと感じる場合は、趣味や関心のあるテーマから始めると続けやすいでしょう。
- 音読も効果的: 声に出して読むことで、目からの情報だけでなく、耳からの情報も加わり、脳がより活性化されます。また、口や舌を動かすことも脳への刺激となります。
- 内容を人に話してみる: 読んだ内容を家族や友人に話してみることで、記憶の定着を助け、話をまとめるという思考の整理にもつながります。
書くことが脳を元気にする理由
文字を書くという行為は、単に文字を並べるだけでなく、頭の中で考えをまとめ、それを言葉にして表現するプロセスです。このプロセスが、脳の働きを多角的に刺激します。
書くことで刺激される認知機能
- 思考の整理と構造化: 頭の中に漠然とある考えを、文章として書き出すことで、論理的に整理し、構造化する力が養われます。
- 記憶の検索と定着: 過去の出来事や学んだことを書く際には、記憶を検索し、引き出す作業が行われます。また、書き出すことで記憶がより鮮明になり、定着しやすくなります。日記などは、過去の出来事を思い出す良い機会となります。
- 遂行機能: 何について書くか決め、どのように構成するか計画し、実際に書き進めるという一連のプロセスは、目標設定、計画立案、実行、見直しといった遂行機能を鍛えます。
- 表現力と語彙力: 自分の考えや感情を適切な言葉で表現しようとすることで、語彙力が豊かになり、表現力が向上します。
- 注意と集中: 字を丁寧に書く、誤字脱字がないか確認するといった作業は、細部への注意力を養います。
書くことを認知機能アップに繋げるヒント
日記を書く、読んだ本の感想を書き出す、その日の出来事をメモするといった簡単なことから始めることができます。手書きであれば指先を使うので、さらに脳への刺激になりますが、パソコンやタブレットを使って入力するのも、思考を整理し表現するプロセスは同じく有効です。
- 難しく考えすぎない: 毎日びっしり書く必要はありません。一行日記でも、箇条書きでも構いません。楽しんで続けることが大切です。
- テーマを決めて書く: 「今日あった嬉しかったこと」「子供の頃の思い出」「挑戦してみたいこと」など、テーマを決めて書いてみると、思考がまとまりやすくなります。
- 読書と組み合わせる: 読んだ本の要約や感想を書くことは、読書で得た情報を整理し、自分の考えを深めるのに役立ちます。
読書と書くこと、どちらも楽しむ
読書で新しい知識や物語の世界に触れ、そこで得た刺激を書くことで自分の中に落とし込む。この二つの活動を組み合わせることで、認知機能への相乗効果が期待できます。例えば、読書ノートをつけてみたり、読んだ本からインスピレーションを得て短い物語や俳句・短歌を作ってみたりするのも面白いでしょう。
読書も書くことも、一人でじっくり取り組める活動です。自分のペースで、静かな時間を持つことができます。もちろん、家族や友人と読んだ本の感想を話し合ったり、一緒に日記を見せ合ったりするのも、会話が生まれる良い機会となり、さらに脳を活性化することにつながります。
継続が鍵
読書や書くことは、特別な準備や費用があまりかからず、日常生活に取り入れやすい活動です。すぐに目に見える効果がなくても、毎日の習慣として続けていくことが大切です。楽しみながら、無理のない範囲で続けることで、認知機能の維持・向上に繋がる可能性があります。
本棚に眠っている一冊を開いてみたり、新しいノートを用意してみたりするところから始めてみませんか。言葉の世界に親しむ時間は、脳を活性化させるだけでなく、日々の生活に彩りと発見をもたらしてくれるはずです。